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「演歌の乱」ゴールデンSP第2弾!(全曲レビュー付き)演歌歌手が歌うJ-POPに感動

演歌の乱 2019年3月26日放送

<追記:番組内で歌われた全12曲+メドレーについての個人的レビューを書き加え、全面的に改訂しました>

2019年3月26日(火) TBS系 午後8:54~11:07放送
「ミリオンヒット音楽祭 演歌の乱」
http://www.tbs.co.jp/program/enkanoran/

J-POPのヒット曲を人気演歌歌手が歌う祭典「ミリオンヒット音楽祭 演歌の乱」。2018年9月に引き続き、ゴールデンタイムに放送されました。番組告知等では「特番ゴールデン第2弾」と紹介されていましたが、番組自体はこれで3回目。「Jポップで紅白歌合戦SP」というサブタイトルも付きました。

<歌唱曲>
1.天童よしみ「ultra soul」
2.純烈「桜」
3.丘みどり「紅(くれない)」
4.大江裕「ハナミズキ」
5.市川由紀乃「Hero」
6.三山ひろし「シングルベッド」
・※ 平成30年間スーパーヒット14連発
7.五木ひろし「糸」
8.杜このみ「三日月」
9.徳永ゆうき「オールドファッション」
10.石原詢子「innocent world」
11.藤あや子「366日」
12.細川たかし「愛情」
<補足解説>
・歌手の真剣さ・緊張感が伝わる演出
・あまりに強すぎる「バラエティ色」
・警戒される番組から、ぜひ出たい番組へ?
・歌っている最中にカメラを切り替えないで!
・「歌に感情を乗せる」という高等技術

 

1.天童よしみ「ultra soul」

オリジナル:B’z
難所:演歌にない、アップテンポの、迫り来る歌詞を歌いきれるのか?
衣装:上下黒のパンツスーツ。ジャケットにはキラキラした飾り

トップバッターは紅白出場23回の天童よしみ。「演歌の乱」には初出演。

どこかの楽屋で、課題曲のタイトルが記されたカードを番組スタッフから受け取る天童さん。
「ウルトラ…ソウル? これスゴイ。最大のチャレンジかもしれない。悩むなコレ。また1キロ痩せるやろ(笑)」

この流れは、前回の「演歌の乱」と同じ。つまり今回も…。

1.「次に歌ってもらうヒットソングはこれ!」 ※発売年と売上枚数など
2.「それを歌ってくれる演歌歌手はこの人!」 ※代表曲などを紹介
3.「この曲の難しい所は…」
4.「その難所を克服するために、こんな練習をしました」

というVTRがまず流れ、その上でスタジオ歌唱になるようです。
「ultra soul」については、B’zのMVが少し流れただけで、曲についての説明(何年発売とか、何百万枚売れたとか)はありませんでした。

スタジオ歌唱。稲葉浩志さんほどではないとはいえ、さすが天童さん、ソウルフルな感じが出ていました。歌声が安定しているのはさすが。イントロやサビで左手を上げたり、天童さんにしては派手なアクションも。ただ体が大きくないせいもあって、どうしても動きがコンパクトに見えてしまうのがもったいない。それに、高音部分を力を込めてシャウトしたり、歌の盛り上がりに合わせて目をつぶったりという感情の波が感じられず、ずーっと前を見たままで、顔の表情の変化に乏しかった。まあこれは楽に歌いこなせてしまうのだから仕方ないことかもしれません。

最後の♪ウルトラソウッ、ハーイ!で、左右から銀テープが打ち出されて派手に終了。ゲストたちから「カッコいい~」という声が。でも、歌った後に天童さん本人に感想を聞く場面はありませんでした。感想を聞かれた井上芳雄は「天童さんは歌手として天才だと思っている。『天童よしみに歌えない歌はない』というのが自分の中の定説。今日また見事にそれが証明されてるなと思います」

一番星/天童よしみ「一番星」天童よしみ

ここでやっと番組タイトルが画面にドーンと出て、司会者とゲストの紹介。司会は東野幸治。白組応援団長は細川たかし。紅組応援団長は渡辺直美。ひな壇ゲストは、吉村崇(平成ノブシコブシ)、鈴木奈々、松井珠理奈(SKE48)、小木博明、田中美佐子、立川志らく、Mr.シャチホコ、井上芳雄。

 

2.純烈「桜」

オリジナル:コブクロ
難所:上と下のサブマリンハモリ
衣装:淡いピンク(桜色)のスーツ

昨年の紅白に初出場し、なんやかんやあったものの再び勢いづいている、4人組男性歌謡グループ・純烈。「演歌の乱」初出演です。
番組スタッフが向かったのは、彼らが活動するスーパー銭湯の一つ、大江戸温泉物語(東京・お台場)。大広間で、タオルなどのグッズ、色とりどりのハート型ランプやサイリウムを持ち、熱烈に応援するファンの女性たちの様子が。

控室で、歌ってもらう曲がコブクロ「桜」であることを伝えると、リーダー・酒井は「テレビ観てる人も、純烈が歌唱力で紅白に出たとは誰も思ってないよ!」

確かに、歌唱力を前面に出して売っているグループではありませんが…。コブクロの歌ですから、黒田&小渕のハーモニーが命。その場で音源を流して聴く純烈メンバーたち。

Aメロ「冬の寒さに…」では、主旋律よりも下のメロディーでハモり、A’メロ「土の中で眠る…」では、主旋律よりも上のメロディーハモる。つまり同じ主旋律に対して、1回目と2回目で、ハモリ方が変わります。
小田井曰く「ハモリがサブマリン(潜水艦)。海面から出たり潜ったりまた出たり潜ったり。サブマリンハモリやからね」。うまい例えですね。

でもココで、重大な間違いが。上ハモリと下ハモリを説明するため、本物のコブクロが「桜」を歌っているライブ映像が流れたのですが、「土の中で眠る…」を下ハモリ、続けて「会う度にいつも…」を上ハモリ、と説明する字幕とナレーションが。いいえ、そこはどっちも上ハモリでした。素人が聴いても分かるレベルで、多くの視聴者が「あれっ? 同じじゃないの?」と思ったはずです。

あらためてコブクロの歌う「桜」を聴いてみたところ、確かに小渕さんは「桜」の中で下ハモリと上ハモリを使い分けた「サブマリンハモリ」をやっています。ただ「演歌の乱」の制作者が、それを説明するための肝心なVTRで、引用する部分を間違えていたのです。これ、誰も気づかなかったんでしょうか? まだ序盤なのに、疑問符が付く形になりました。

白川が主旋律(コブクロの黒田パート)を、酒井がハモリ(コブクロの小渕パート)を歌うことに。つまり、酒井にすべての重荷が掛かる形。コブクロの名前にちなんで、「サカシロ(酒井+白川)で頑張る!」と酒井。

リーダー酒井がサブマリンハモリを見事にこなし、素晴らしかったです。純烈のオリジナル曲でこれほど長いフレーズをハモることはおそらくほとんどなく、白川+酒井の歌唱力が生かされていました。選曲もよかったのでしょう。スタジオで歌うのは酒井・白川の2人だけなので、後ろの小田井・後上の2人はほとんど何もせず(笑)。ただ立っているところをアップで映され、司会者たちの笑いを誘っていました。でも「♪フゥーウーウー」というバックコーラスで少しだけ参加(※後上・小田井は後のメドレーコーナーで出番が)。彼らはメインボーカルとバックコーラスという構成が基本であり、全員のコーラスワークを聞かせるタイプではありませんのでこれは仕方ない。本人たちも言っていた通り、歌唱力で売っているワケではないので「演歌歌手が、その高い歌唱力でポップスを歌うとどうなるか?」というこの番組の趣旨からは少し外れており、純烈の出演ありきの抜擢だったのでは?と感じました。

酒井は人差し指を立てて、下ハモリの時には下に向け、上ハモリの時には上に向けており、志らくさんに「なぜ?」とツッコまれていました(笑)。

純烈のハッピーバースデーAタイプ/純烈「純烈のハッピーバースデー」(Aタイプ)純烈

 

3.丘みどり「紅(くれない)」

オリジナル: X JAPAN
難所:サビのエンドレスに続く高音地獄
衣装:赤と白の花をあしらった黒の着物

紅白に2年連続出場した、演歌界の美人歌姫・丘みどり。「演歌の乱」は前回に続き2回目の出演。
どこかのコンサート会場で、緑色のペンライトを振りながら「みどりちゃーん!」と熱烈な声援を送っているファンの様子、そして終演後にハイタッチ会をやっている映像が。(奥に純烈メンバーが映っていたので、新木場で行われたイベント?)
昨年のテレビ番組出演本数は、139本(※歌番組+バラエティ番組?)だそうです! コンサートは年間150本以上という超売れっ子。

スタッフが本人に今回歌ってもらう曲を伝えると…「えっ!えっ!いやこれは無理でしょー!?これは無理!」「キーも高いし、後半ずーっと、休む暇なく、高音が続くじゃないですか」

確かにこの曲、高音部が続くサビが何回も繰り返されます。

「まず高音が出るか、という不安。それから、出たとしても、すごく苦しくなって歌うから、聴いてる人も、すごく苦しそうに聞こえるんじゃないかという不安もあるし。不安しかない!」

今回のためにあつらえたという、黒地に赤や白の大きな花をあしらった着物で登場。赤い花はまさに「紅」。頭の右側に付けた、黒い羽根を集めたような飾り(ウィッグ?)も効果的で、着物ではありますが黒と赤の色調はどこかロック風です。
X JAPANのToshIがライブでそうしているのに倣い、イントロが始まる直前に丘は「くれないだーーーーー!」と思いっきりシャウト(笑)。スタジオも一気にボルテージが上がります。高音地獄となるサビ、「紅に染まった…」×2、「もう二度と…」×2で、都合4回繰り返しましたが、見事に歌い切りました。カッコよかった!

歌い終わった丘、緊張が解けた笑顔で「あははー!あーー緊張したーー!」

ネット上では、丘みどりに対して「高畑充希に似ている」という声をよく見かけます。その高畑充希は歌唱力が高いことでも知られています。昨年ドコモのCMにOL役で何度も出演する中、スマホを片手に夕暮れ時の港で海に向かい、スーツ姿で髪を振り乱しながらこの「紅」を、熱唱する…というバージョンがありました。そのCMも話題になり、歌唱力の高さに感心されつつも、一方で、テレビから唐突に流れる叫ぶような熱唱は耳ざわりだという声もあったようです。
で、今回番組スタッフが「紅」を選曲するにあたり、あのCMを意識したのは間違いないと思われます。練習風景として、黒革のライダースジャケット姿の丘みどりが、河原のような場所に立ち、スマホを片手に歌っている映像が少しだけ流れ、ドコモのCM映像とかなり似ていましたので(笑)。

紙の鶴(DVD付)/丘みどり「紙の鶴」(DVD付)丘みどり

 

4.大江裕「ハナミズキ」

オリジナル:一青窈
難所:表示されず
衣装:黒地にピンク水玉の袴+ピンクの羽織

「ハナミズキ」は、平成30年の間で最もカラオケで歌われた曲だそうです。

北島ファミリーの大江裕は、2018年の紅白に、北島三郎と共に、北島兄弟(北山たけし&大江裕のユニット)として特別出演。

大江に、「ハナミズキ」を聴いてもらうと…。
「サビの部分との強弱の付け方が少しだけで、淡々と歌っている。演歌歌手が強弱を抑えて歌うのはすごく難しい」

北島ファミリーの歌手は、師匠・北島三郎に少なからず影響を受けており、コブシを全開で回し、男らしく、力強く歌うのが特徴。そんな大江が、力強さを抑え、女性の曲を歌い上げられるのか? なぜか裸でお風呂の湯につかった状態で練習する映像が(笑)。

スタジオ歌唱。大江くんは常に目線は上を向き、優しく、よく通る声で、語りかけるように歌い始めます。歌詞のイメージが完全に体に入っているような余裕が感じられました。2番に入ると、ギアを入れ替えたようで、声量や太さが明らかにアップ。歌が進行するにつれて演奏も厚くなって盛り上がっていくので、これは正しいと思います。
他の歌手は、画面右上にその曲の「難所」を簡潔に説明する文が表示されていたのですが、大江くんの時は、ずっと「一青窈×北島ファミリー」とだけ表示されていたのが謎でした。この曲の難所を見つけられなかったのでしょうか?

大樹のように/大江裕「大樹のように」大江裕

 

5.市川由紀乃「Hero」

オリジナル:安室奈美恵
難所:後半の疾走感ある速いテンポ
衣装:黒い着物。赤・白・グレーの四角が連なったような模様

「Hero」は、安室奈美恵の2016年の曲。NHKのリオ・デ・ジャネイロオリンピック番組のテーマソングでした。
市川由紀乃は紅白2度出場の実力派歌姫。残念ながら2018年の紅白には出られませんでしたが、今後もチャンスはあると思います。コンサート会場でなく、どこかの神社のお祭りで「由紀乃ちゃーん!」と声援を送られながら歌っている様子が紹介されます。

今回の曲を伝えられた市川由紀乃。素直に「うわっ!難しいです。リズムが速くなるんですよね」「うわぁ。ちょっと今、頭の中が真っ白です」

この曲、序盤はゆっくりと始まりますが、途中から一気にテンポアップし、早口でたたみかけるような部分が出てきます。前半はバラード、後半はビートのきいたダンスナンバー。同じ曲を、全く違うアレンジにしてくっつけたような構成なのです。

市川由紀乃のスタジオ歌唱。冒頭のフレーズ「♪ I’ll be your hero~」をゆったりと歌い始めただけで、その艷やかで伸びのある声に、スタジオから歓声が上がります。低音部は太く、ところどころドスを効かせるような部分も入れ、聴き手を引き込む由紀乃。そうやって地面を走るように歌い、そこからサビの「君だけの~」で一気に空に向かって飛び立つように、伸びやかに歌い上げます。そして疾走する後半へ。難しい符割で、早口で歌わなければならない部分も、体全体でビートを感じながら言葉のアクセントを付け、はっきりと発音します。高速のコブシも適宜入って効果的でした。

ひな壇ゲストたちが口々に「すごーい!」。司会の東野も「これこれこれ!これですよ!」と、これがこの番組の醍醐味と言わんばかりに興奮気味。松井珠理奈が「いやもう、スゴすぎて微笑んでしまう、笑ってしまうというのはこのことかと思いましたね」とコメント。

雪恋華(ゆきれんげ)/市川由紀乃「雪恋華」市川由紀乃

 

6.三山ひろし「シングルベッド」

オリジナル:シャ乱Q
難所:独特のつんく節を歌い上げることができるのか?
衣装:薄い紺色と白のストライプが斜めに入った着物+藍色の羽織

「シングルベッド」は、シャ乱Qの初のミリオンヒットとなった作品。
三山ひろしは紅白にこれまで4回出場。前年の失敗から見事リベンジを果たした、昨年の紅白での124人連続けん玉チャレンジの映像が流れます。スタジオから「これ見てたー!」「すっごいドキドキした!」「ホント感動した!」と声が。「けん玉演歌歌手・三山ひろし」「紅白けん玉プリンス三山ひろし」と紹介されます。もう、世間的には完全にけん玉と結び付けられて覚えられている感じですね(笑)。

スタッフが曲を伝えにいった時も、大きなけん玉を持っている三山。すかさずけん玉PRを始め、技も披露(吊るした玉を自転させてから剣に刺し、まだ回転力が残っているうちに柄の底(中皿)を指一本で支えると全体が回転! 技名不明)。
「いまけん玉協会さんの方で認定していただいてまして、けん玉四段。それから二級指導員の免状を持っている。それからけん玉大使に任命していただきまして。おかげさまで本も発売させていただいて。『三山ひろしの初めてでも絶対d…」
本のPRを始めたところでブチッと切られてました(笑)。

今回の曲を伝えると…。「男の人の切ない思いをかっこよく歌っているつんく♂さんがすごいなと」「つんく♂さんのビブラートは、演歌みたいにゆったりした感じじゃない」

三山の歌い方は、のどをゆっくり大きく震わせる歌い方のビブラート。対してつんく♂のビブラーとは、速くノドを震わせる、つんく節とも言える、独特なビブラート。
…うーん。それは分かるんですけど、ものまね番組でもないのに、つんく♂に寄せることが目的になるのはおかしくないですか? 三山くんの歌い方でうたうとどうなるか?がこの番組の面白さじゃないんですかね?

番組スタッフに「けん玉を封印してほしい」と言われ、「困ったな…」と言う三山。…いや別に困らないのでは(笑)。「使いたいですか?」「そりゃやっぱり。新しい技もいろいろあるので」
なんだか趣旨が変わってきてるような(笑)。トレードマークであるけん玉をやりながら歌って、よりインパクトを残したいという気持ちは分かりますが…。
その代わり、シャ乱Qのギタリストである、はたけが演奏で参加すると教えられ、「めちゃくちゃ光栄ですね」と驚く三山。

スタジオ歌唱。シャ乱Qのギタリスト・はたけが、向かって右側に立ち、ボディからネックまですべてが真っ赤な(!)ギターを演奏しました。

結果的に、三山ひろしのこんなに男っぽい歌唱を聴いたのは初めてでした。やや荒っぽいブレスや、ロック風のしゃがれなど、通常のステージでは見せない歌い方が。表情も、ふだん演歌を歌う時は、三波春夫を彷彿とさせる「キリッ」「ニカッ」とした表情が多いのですが、今回は色っぽく目を閉じて歌ったり、やや歯をむき出しにして歌ったり。演歌風のビブラートは封印し、澄んだ伸びやかな声が随所で聞かれました。いやはや、三山ひろしは、どんな歌でも、それに合わせた声色と歌い方ができる応用力を発揮するのでした。ホントに彼の歌唱力は奥が深い。
はたけと共演した感想を求められ、「最初から最後まで、ずーっと感動してました」。つんく風のビブラートができていたのかどうかは言及されませんでしたが、はたけは「エロくない頃のシャ乱Qというか、素直なつんく♂の頃の感じ」と評していました。

望郷山河タイプA/三山ひろし「望郷山河」(タイプA)三山ひろし

 

平成30年間スーパーヒット14連発

ここで、前回はなかった、ハーフタイムともいうべき企画が。紅白入り乱れてのメドレーコーナー(ただし天童よしみ、三山ひろし、藤あや子、細川たかしはスタジオにおらず参加せず)。このコーナーだけ出演する歌手も加わります。
ステージ左側に男性陣、右側に女性陣が並んで待機しつつ、出番になった歌手が前に出てきて歌う形。途中のBメロから歌い始めてすぐにサビ、という構成がほとんどでした。

▼1.徳永ゆうき 前前前世/RADWIMPS

「Lemonで再生回数1200万回」

いちばん最初の「演歌の乱」で徳永が歌った曲でもあります。でも初めて挑戦したその時に比べて、今回はアップテンポのリズムに乗れて滑らかで、歌い慣れた感がありました。「胸が痛いよ」を「いたーァアァいよ」とさりげなくコブシを入れる、この辺の歌い回しが心地いいんですよね。サビの「君の前前前世」の一つ目の「ぜん」で、オリジナルのRADWIMPSと違って「ぜ」は低く歌い、そこから「ん」にかけてしゃくるように持っていって歌うのも特徴的でした。

ゆうきの演歌 出発進行!/徳永ゆうき「ゆうきの演歌 出発進行!」徳永ゆうき

▼2.丘みどり Winter, again/GLAY

「演歌界の美人歌姫」

「紙の鶴」通常盤のジャケットと同じ赤い着物。大サビでメロディーが変化してやたらと高い音が出てくるため、それに合わせてキーを落とした感じでした。

紙の鶴/丘みどり「紙の鶴」丘みどり

▼3.走裕介 U.S.A./DA PUMP

「船村徹の弟子」

ご存知昨年の大ヒット曲。走は紺色の着物+白い帯。オールバックの髪型。HIP HOP風の男性ダンサー4人が後ろでキレキレに踊って盛り上げます。後ろで待機している歌手も、「いいね」ダンスをやって盛り上がります。走は正統派演歌を歌える人ですが、この番組での歌い方は完全にロックアーティストのそれなんですよね。船村徹に弟子入りする前はバンド活動をしており、安全地帯などをカバーしていました。

走裕介全曲集 北のひとり星/走裕介「走裕介 全曲集 北のひとり星」走裕介

▼4.市川由紀乃 愛を込めて花束を/Superfly

「紅白2回出場」

結婚式などでもよく流される、Superflyの代表曲の一つ。ワンフレーズごとの歌い終わりを、ふっと力を抜いてるところが市川由紀乃の特徴でしょうか。原曲にも入っている速いコブシもバッチリ再現。うまいですねえ。ぜひコンサートでフルコーラス聴きたいです。

雪恋花(初回限定盤)/市川由紀乃「雪恋華」(DVD付・初回限定盤)市川由紀乃

▼5.松阪ゆうき Everything/MISIA

「演歌界のニュープリンス」

歌い始めのやわらかい第一声で、耳をグッと引き付けられました。カメラ目線で(!)微笑んで歌う箇所あり、目を閉じて狂おしく歌う箇所あり。適度に吐息まじりに、ドラマチックに歌い上げました。「いら~ない~↑」の最後の裏声も見事。前回の「演歌の乱」で石原詢子が歌った曲なので、ここで取り上げられるのはちょっと意外でした。

令和夢追い太鼓/松阪ゆうき「令和夢追い太鼓」松阪ゆうき

▼6.杜このみ 粉雪/レミオロメン

「細川たかしの一番弟子」

やや低めのメロディーでずっと進んでいき、サビでいきなり高音になります。いちばん盛り上がる部分「そーめらーれたーならー」は、目をつぶって口を大きく開けての熱唱。民謡を歌ってきて、かなり高音域までわりと楽に出せる彼女が、こういう表情を見せるのは珍しいです。でも熱唱している最中に、画面に入り切れないほどのドアップで師匠・細川たかしを大写しにするのはやめて…(笑)。

花は苦労の風に咲く/杜このみ「花は苦労の風に咲く」杜このみ

▼7.純烈 シンデレラガール/King & Prince

「去年紅白出場」

King & Princeは昨年CDデビューした、ジャニーズの新グループ。そのデビュー曲です。キンプリは純烈と同じく、昨年の紅白に初出場してこの曲を披露。そんなフレッシュな彼らの歌を、おじさんグループの純烈が歌って大丈夫か…と余計な心配をしてしまいましたが、意外とこれが似合っている! 紫&白の王子様衣装(「プロポーズ」のMVで着用)で登場。先ほどの「桜」とは並び順を変え、今度は後上・小田井が真ん中に。後上翔太が初っ端のメインボーカルをとり、フレーズごとに交代しながら歌っていきます。振り付けもオリジナルにならってバッチリと揃えてキメました。曲のイメージを壊さない、爽やかな歌唱でした。

▼8.石原詢子 恋しさとせつなさと心強さと/篠原涼子

「紅白でDA PUMPと対戦」

オリジナルの篠原涼子は、カメラの向こうの視聴者にケンカを売るような、よい意味でトガった感じがあったと思うのですが、石原の声には力強さがありつつも隠しきれない上品さがありました。着物だったせいもあるでしょうか。ドレスで、コンサートで伸び伸びと歌うところを見てみたい気もします。ところで、またこの「DA PUMPと対戦」の紹介文を使うとは!(後述します)

▼9.大江裕 チェリー/スピッツ

「北島ファミリー」

リズムに乗って、聴衆を煽るように握った拳を振り上げたり、腕を広げたりして力強く熱唱。ややオーバー気味のアクションでしたが、歌詞内容には合ってましたし、歌に対する誠実さが伝わってきました。でも、なぜカメラは一緒に口ずさんでいるゲストの鈴木奈々の方をずーっと映すのか…。

▼10.羽山みずき ヒロイン/back number

「日本レコード大賞優秀新人賞」

これまで歌っていた力強い女性歌手とは明らかに雰囲気の違う、澄んだ可憐な声が突然響いきて、スタジオの空気がフワッと変わりました。伏し目がちに歌ったかと思えば、次の瞬間には視線を上げてにこやかに。語りかけるように、包み込むように。胸元に手を添えて歌うのも、おしとやかな人柄が表れます。オリジナルと違い、各フレーズの最後をやわらかく歌う、丁寧な歌唱。心洗われるような歌唱でした。

古いタイプの女です/羽山みずき「古いタイプの女です」羽山みずき

▼11.走裕介 サウダージ/ポルノグラフィティ

「船村徹の弟子」

メドレー2曲目。早口言葉のように連続する部分が長く出てきます。滑舌が悪いと無理ですが、歌詞がハッキリ伝わってくるのはさすが。サビは、ポルノグラフィティ以上に、「泣き」や「がなり」をこれでもかと取り入れた歌い方でした。演歌歌手で、これほどエモーショナルな歌い方ができるのはスゴイ。前述したように、こちらが原点の姿なのでしょう。

春待ち草/走裕介「春待ち草」走裕介

▼12.石原詢子&杜このみ Steady/SPEED

この二人によるデュエットは、演歌ファン的には結構貴重。起伏の激しいメロディーで、かなりの高音になる部分も石原はきちっと歌います。サビの後半、やたらと高い音域の「Dream On Dream On…」という部分は、杜このみが裏声っぽく。

▼13.徳永ゆうき ひまわり/秦基博

メドレー2曲目。この曲に元々入っているコブシに加え、徳永ゆうきが加えてくる独自のコブシ回しがありました(そばにいたいよォ~ とか 出来るこーとがァ~ とか)。それが心地よくて、似合うんですよね。終始、優しい笑顔で歌い、言葉が素直に心にスッと入ってきました。この曲も歌い慣れている感じでした。ゲストの吉村崇から「徳ちゃん!さすがだぜ!」と声が。実は飲み友達なのだそうです。

渋谷節だよ青春は!/徳永ゆうき「渋谷節だよ青春は!」徳永ゆうき

▼14.丘みどり 恋/星野源

メドレー2曲目。オレンジのワンピースを着た女性ダンサー4人がついて盛り上げました。この曲はやっぱり「恋ダンス」がないと盛り上がらないですしね。丘みどりは終始楽しそうに歌い、曲終わりの部分だけダンサーたちと振り付けを合わせていて、かわいかったです。
先ほどの「U.S.A」では、後ろで他の歌手が「いいね!」ダンスをしてましたが、この「恋」では皆、手拍子だけ。ただ一人徳永ゆうきだけが、ちゃんと恋ダンスの振り付けを一緒にやって曲についていってました(笑)。

メドレーをすべて歌い終えて、井上芳雄の感想。
「ヒットソングって、キーが高くて、歌うのが実は難しい曲が多いんですけど、皆さん当たり前のように歌うんで。これ、すごいことなんですよ。レベルの高さをあらためて思い知らされましたね」

その感想に一同納得。東野も「我々は今、スゴいモノを目撃してるんですよね」

さて、これで番組の前半が終了。個別の歌唱に戻ります。

 

7.五木ひろし「糸」

オリジナル:中島みゆき
難所:「こぶし」を封印して歌えるか?
衣装:黒スーツ+白シャツ。ノーネクタイ

五木ひろしがこの番組に初登場。紅白連続出場48回。71歳。「歌謡界に君臨し続けるKING of コブシ」だそうです。
「糸」は、27年前に発表された曲でありながら、2015年以降、4年連続で年間カラオケランキングTOP3入り。
五木に曲を伝えにいった場所はなんと、どこかのコンサート会場で、リハーサルを終えたばかりと思われるステージの上でした。臨場感ありますが、かなり無理をして時間を取ってもらった感じ?
「曲調が優しいだけに、意外と難しいかもしれないね」「カバーする時は、(原曲の)その人のイメージを大事にします。あまり自分を出しません」
五木さんらしいコブシをきかせた感じにはしないんでしょうか、と聞かれると「いや、そういうことはしません。こぶしは一切入れません」

なんと、コブシを封印して歌うと宣言。ここで、代表曲「契り」を歌う昔の映像が流れます。「♪愛する人よ 美しく~」

スタジオでは「あ、コブシだ!コブシだ!」「ずーっとコブシだよ!」というゲストたちの声。…いや、それはコブシじゃないです。 ちょっと演歌歌手を小バカにしてませんか?(^^;

番組スタッフは、演歌っぽい歌い方はもうすべて「コブシ」だと思ってるようです。コブシは音符にしようと思えばできる装飾的なメロディー(節回し)であって、音符にできない“揺れ”は「ビブラート」に過ぎません。五木さんの歌は、全般的に独特のこまかいビブラートが入っているのです。それが五木さんの持ち味ですが、コブシとは違います。なのに「五木といえばこぶし満載」「五木といえばこぶし。こぶしがなければ五木ではない」とナレーション。そんな五木が、コブシを封印して「糸」に挑む!と煽られます。いや違うんだけどなぁ。

名古屋で舞台(2019年3月の御園座公演?)をやっているため、CBCのスタジオから中継。ピアノ一本の伴奏。ピアニストはなんと清塚信也。ステンドグラスに囲まれ、レッドカーペットにグランドピアノという高級感あるセットで歌いました。

すごく味わい深い「糸」でした。でも、いつもの歌い方を全然封印していませんでした。スタジオで見ている人たちや視聴者も「え? これ封印してるの?」「コブシ入ってるよね?」と思ったのではないでしょうか? 確かに、装飾的メロディーを加える「本来の意味でのコブシ」は入っていませんでした。でも五木節の独特の「タメ」や発音、ビブラートがてんこ盛り。やはり五木さんは、何を歌っても五木ひろし節になるのです。それくらいクセの、いや個性の強い、唯一無二の歌唱なのです! せっかくなら、「えー!五木さん、こんな素直でキレイな歌い方もできるのかー!」と思わせてほしかったですが、やはり五木節は健在でした。
「演歌歌手だってポップスの曲をポップスっぽく歌えるんだぜぃ!」だけではなく、「演歌らしさを出してポップスを歌うとこんな違った魅力がある!」というのも、この番組の趣旨だと理解しています。なので、ある意味この番組の醍醐味と言える場面でした。

ただ、撥音便(小さい「っ」)っぽく歌う箇所がいくつもあり、気になりました。これは五木さんのクセだと思います。

♪なーぜー めぐーりあーうーのっかをー
♪あうべきいっとにー であえるこっとをー
(上記以外にもたくさん)

五木ひろし全曲集2019「五木ひろし全曲集2019 ベストセレクション」五木ひろし

 

8.杜このみ「三日月」

オリジナル:絢香
難所:表示されず
衣装:赤と白の着物

細川たかしの弟子・杜このみ。前回の「演歌の乱」と同じく、デビューした2013年のレコ大新人賞受賞の時の映像がいまだに使われていましたが、TBSは最近の映像を持ってないんでしょうか。

着物姿の杜このみ、どこかの控室で曲を知らされると「こういうジャンルは初挑戦ですね」
そこへ「おつかれさまー」とラフな服装(黄緑色のフリース)の細川たかしが。師匠からエールを、と求められると「頑張る。それだけだ。ハハハハ」「弟子を応援する前に、自分が(自分も歌うから)大変なんだ。じゃあね」と面白みのないコメントを残し、嵐のように去っていきます。

スタジオ歌唱。ドレス姿のヴァイオリニスト、岡部磨知が隣りで演奏し、華を添えます。大江裕の「ハナミズキ」に続き、この曲も「難所」が何も示されず、「細川たかしの一番弟子」とだけ表示されていました。なぜ?
メロディーの上下の激しい難曲なのですが、さすが、音程は完璧でした。語りかけるような部分、伸びの部分、さらにファルセットっぽい部分と使い分け、押しと引きの緩急が素晴らしかったです。所々に入る、しゃがれるような「泣き」も効果的でした。

「岡部さんのヴァイオリンがすごく気持ちを盛り上げてくださったので、ノッて歌うことができました」
東野「あんたは自分のことよりまず岡部さんを褒める、ええ子やなあ!師匠!ええ子じゃないですか」
細川「いやいや。高い音もしっかり出てたしね。完璧。完璧。大したもんだ」

杜このみシングル集/杜このみ「杜このみ シングル集」杜このみ

 

9.徳永ゆうき「オールドファッション」

オリジナル:back number
難所:演歌にない苦手なサビの裏声
衣装:光沢のある薄緑の着物+白い袴

「Lemon徳永がラブソングを熱唱!」と紹介されました。ついに「Lemon徳永」と呼ばれるまでに(笑)。

「オールドファッション」は、戸田恵梨香とムロツヨシが共演した、2018年放送のTBSドラマ「大恋愛~僕を忘れる君と」の主題歌。back numberは、ちょっと情けない(?)男の恋心を歌った口語体の歌詞、耳に残るメロディーとボーカルが人気のバンドです。ここでいう「オールドファッション」とは、あの素朴なドーナツのこと。

・back number「オールドファッション」歌詞(歌ネット)

徳永ゆうきは、前回の「演歌の乱」で米津玄師の「Lemon」を見事歌い上げ、その模様がUPされたYouTube動画の視聴回数は、なんと1200万越え。10万20万でも十分すごいのに、1200万って! 2ケタ違うのです。(°_°)
その数字を見た、当時の私もツイートしています。

野暮を承知で書きますが、この1200万回というのは、「演歌の乱」を録画したものを一般人がそのままYouTubeにUPしたものであって、言わば著作権侵害の違法動画です。それを削除せず、黙認・放置し、こうやって番組で再生回数をPRするというのはちょっと引っかかりを感じます。(今回の「演歌の乱」が放送される頃には削除されていましたが)

今回の曲を伝えにいった番組スタッフから、前回の「演歌の乱」の反響を聞かれると「ファンレターの数が増えました。若い女性から。すごいですよ」と徳永。米津人気に便乗しているのがムカつく、とナレーションが入ります(笑)。いやいや、それを歌った彼の実力の賜物ですから。

曲を伝えると「初めましてなんですけど…」。やはり演歌ひと筋の徳永は、back numberを知りませんでした。
back numberは裏声、つまりファルセットを効果的に使うのが特徴です。楽曲を実際に聴いて、裏声連発していることに驚く徳永。演歌では裏声を使ったことがないとのこと。
そして、徳永自身は恋愛も未経験。女の子と手もつないだことがない彼が、果たして究極のラブソングを歌うことができるのか?と煽られます。

…何の根拠もありませんが、「女の子と手もつないだことがない」はさすがに大げさだと思います。彼は決して「イケメン」と呼ばれる部類には入らないかもしれませんが、顔の作りがカッコいいことと、笑顔ににじみ出る男らしさ・人柄の良さというのは別物ですから。仕事やプライベートで彼と身近に接したことがある女性ならば、友達以上の存在として好意的に受け止めている人は多いのでは…と私は考えています。いや本当にトークも気が利いて面白いし、ブログに載ってる写真を見てください、とてもイイ顔で笑ってますから。

さて、恋愛未経験の彼には、ある秘策が。画面変わって、よく晴れた日に、千葉県・九十九里浜の砂浜へ。実はこの場所は、ドラマ「大恋愛」のオープニング映像が実際にロケ撮影された場所。真っ白い服を着た戸田恵梨香とムロツヨシが、手をつないで歩いたりする映像です。

九十九里浜に着き、ムロツヨシと同じ白いワイシャツを着ている徳永。ムロの気持ちになれば、この曲をマスターできるのでは?と。そう、前回「Lemon」のMVを再現したように、彼は形から入るタイプなのでした! もはやこの番組での恒例の演出に(笑)。

砂浜で戸田恵梨香がサラサラ落とす砂を両手で受ける、ビルの入口付近で黄色いパーカーを着て壁にもたれ、戸田恵梨香を待ち伏せる、海を眺めながら戸田恵梨香とアップルパイを食べる、公園のベンチに座って会話する…。実際のドラマのシーンそっくりに、服装も合わせて、まったく同じ場所で撮影していました。もちろん戸田恵梨香はいません(笑)。特に、夜の街を一人で疾走するシーンには笑ってしまいました(笑)。

唐突に「実はこの時、徳永はある大切な人を想っていた…」とナレーション。中学生の時に片思いしていた初恋の相手・西村愛里さん。当時15歳、坊主頭・制服姿で、まだ幼さが残る徳永と西村さんのピースサインをした写真が。片思いだったにもかかわらず、2ショット写真はきっちり撮ってるのかー。
てっきり、西村さん本人がスタジオに登場したり、VTRメッセージが届いたりするのかと期待したのですが、それはありませんでした。もちろん御本人から許可は取ったと思いますが、名前と写真を出されてよかったのでしょうか?(^^;

西村さんのおかげで、人を愛することを思い出した徳永。果たして、苦手な裏声を使いこなし、大恋愛の主題歌を歌い上げることはできるのか?…とナレーション。

スタジオ歌唱。軽く微笑み、目の前の人に語りかけるような優しい歌唱はさすが。彼は、あまりはっきりと口を大きく開けて熱唱するタイプではなく、そのせいか発音に少しクセがあり、それが持ち味になっています。後半は、さらに転調してキーが上がります。裏声の部分もきちんと滑らかに出ていました。本気で歌えば地声のままで出せそうな音域だったかも。ただ、そうすると太く声を張ることになって印象が変わってしまうので、原曲のイメージを壊さぬようリスペクトしたのではないでしょうか。

裏声連発で声が細くなり、「Lemon」の時に比べれば、一部歌詞が聞き取りづらい箇所があった気がします。
個人的な感覚ですが、裏声はほんの1、2音であればアクセントになりますが、ワンフレーズずっと裏声で歌われると、そこだけ他の部分と比べて“遠く”なり、言葉の訴求力が下がる気がします。また表情も乗せにくいので、単調な声色が続くことに。演歌で使われないのはそれが理由ではないでしょうか。

井上芳雄は「同じ、歌をうたう者として、うらやましい声を持っているし。あと、見ていたら、あんまり口を大きくは開けないんですよね。でもそのぶん、ノドの奥がきっとすごく開いていて。中で響いているから開ける必要がない。だからファルセット苦手だとおっしゃってたけど、ファルセットを使う必要がないんだと思うんです。どこまでも(地声で?)キレイに出るから。素晴らしい楽器を持ってらっしゃるんです」と称賛。

ゆうきの演歌 出発進行!/徳永ゆうき「ゆうきの演歌 出発進行!」徳永ゆうき

 

10.石原詢子「innocent world」

オリジナル:Mr.Children
難所:桜井和寿の高音 ラスト「果てしなく」を歌えるのか?
衣装:白い花の模様をあしらった黒い着物

「innocent world」(イノセント・ワールド)は、Mr.Childrenの代表曲の一つ。1994年のCD売上げランキングでは193万枚だそうです。

演歌の乱 曲名の間違い

さて、この画面、間違いがあります。分かりますか?

篠原涼子の曲は、正しくは「しさとせつなさと心強さと」です。さらに中島みゆきの曲は「空と君のあいだに」です。「と」が一つ余計。特に篠原涼子のほうは表記を間違いやすい曲名の代表的なものですけど、歌番組なのですから、曲名くらい正しく表記してほしいものです。それにしても、一年のうちにミリオンヒットがこんなにたくさん出るなんて、あらためて、すごい時代でしたね…。

石原詢子を紹介するにあたり、前回の「演歌の乱」でも使われていた、2018年の中野サンプラザのコンサート会場の映像が。
そして前回も指摘した、失礼な肩書き紹介が、今回も使われていました。

「2000年の紅白出場。DA PUMPと対戦!」 …これ、ひどすぎません?

番組スタッフがあまりにも考えてなさすぎで、石原詢子ファンは本気で怒っていいところです。紅白に出たことがある、ということしか強調すべき要素を見つけられず、それを無理やりDA PUMPと結びつけたのでしょうか。紅白での対戦相手なんて、本人のキャラクターや実力とは関係ない情報。もっと「詩吟で鍛えた驚異の歌声」とかあったでしょうに。

さて、課題曲を石原詢子に伝えると…。「あ!知ってる歌! innocent worldって…桜井worldですよね?」
実際に音をPCで聴きながら、「えーちょっと待って。これ出ないんじゃないかな」「たたんでたたんで(たたみ掛けて)もういっちょ行く、という高音WORLDっていうんですか」

この曲の最も高い音は、大サビといいましょうか、それまでに出てこなかったメロディーで、最後の最後に出てくる「果てしなく~↑ 続く」の部分。「く」がものすごく高い音になります。その場で、原曲に合わせて何度も「果てしなく~」と歌ってみる石原ですが、どうしても「くぅ~」がかすれて出ません。

「く」は、原曲キーだと「C#」になります。どこかのスタジオのようなところで、譜面で注意すべき音符に赤鉛筆でマルを付け、レコーディングするようにマイクの前で練習していました。ちなみに石原、着物でステージに出ている時とはまったく違い、普段の髪型はボブカットなんですね。

さてスタジオ歌唱。先ほどの杜このみに続き、再び岡部磨知がヴァイオリンで参加。
個人的には、女性歌手がこの曲をカバーするのを初めて聴きました。確か本家のMr.Childrenは、もうずいぶん前にこの曲を封印しライブでは歌わなくなっているはずなので、それも相まってなんだか新鮮でした。高い部分もきちんと声が出ていて、でも荒っぽく苦しそうな熱唱にはならず、常に背筋がピンと伸びたままという感じ。
そして最後の難関、「果てしなくぅ~↑」の高いところも、見事に出ていました! スタジオのゲストたちも「出た!出た~!」と大喜び。
歌い終えた石原、「もう、毎日、果てしなくぅ~ばかり、そればっかりやってました!」

でも私は、何度か繰り返し録画を見ているうちに、気が付きました。番組で触れられなかった恐るべき事実に。

手元の鍵盤で確かめたところ、本番で石原が歌ったキーは、A(イ長調)でした。原曲はE(ホ長調)です。前述したように練習場面のVTRでは原曲キーのままで「果てしなくぅー」の音(C#)が出せず、声がかすれていました。でも本番ではキーを上げ、さらに上(F#)の音を出していたのです! なんと半音5つ分も上!!! 録画している方は、ぜひ聴き比べて確かめてみてください。
なぜ本番でキーを上げたのか、経緯は分かりません。でも石原詢子の底力を見た気がしました。恐るべし。

通り雨(お得盤)/石原詢子「通り雨」(お得盤)石原詢子

 

11.藤あや子「366日」

オリジナル:HY
難所:演歌ではありえない、サビで爆発する高音
衣装:この日のために特別にあつらえた、藤の花が刺繍された着物

紅組のトリは、藤あや子。
「366日」は、HYの失恋ソング。最近、CMソングで上白石萌歌がうたっていましたね
発売から10年以上を経過した今も、2019年1月のカラオケランキングで8位に入ったロングヒット曲、だそうです。

藤あや子はデビュー32年。最近は、得意の料理をいかし、バラエティ番組でも活躍中。楽屋で今回の曲を知らされる、黒い着物姿の藤。「マジで緊張するんですけど。この番組」と身構えつつ、曲を聴くと「あっ。知ってるこの歌。いい歌だね。歌いたい!」

気に入ったのは歌詞だそうで。「“こわいくらい覚えてるの あなたの匂いや仕草やすべてを” …すっごいリアルじゃないですか。これキュンとくるわ、女性は」

前回の演歌の乱では「本番まで、実際に声を出して練習することはしない。ひたすら聴き込んでイメージトレーニング」という意味のことを言っており、歌って練習している場面はありませんでした。でも今回は歌詞の書かれた紙を持ち、ヘッドフォンをしながら歌って練習している映像が。えっと、方針変更したんでしょうか?(^^;

そんな藤に、HYのボーカル・仲宗根泉本人から応援の動画メッセージが。なんと本番の収録前、まさに自分が歌う直前にステージ袖で見せられたようで「えー!うっそー!」と驚いていました。

「はじめまして、仲宗根泉です。今回は私の歌、366日を歌ってくれるということで、本当にうれしいです。ありがとうございます。演歌歌手のカバーというのはあんまり聴いたことがなかったので。ひねり回したような、ちょっと変わった366日になるのかなというイメージはありますけど」
「Aメロとかは低いのに、大サビに向けてガーンと高くなったりする。抑えてたものが爆発して、ウワーッという感じになって、それに身を任せて歌っている感じ」

仲宗根はこの曲の難所として、サビに入る直前の「今日も↑ あなたに 会いたい↑」という起伏の激しいフレーズを挙げていました。“一気に2オクターブも跳ね上がる”とナレーションが入っていました。いやそんなに一気には上がってないのでは? 歌い出しあたりの最低音と比べると、という意味でしょうか?

仲宗根から「藤さんレベルの人なら、絶対余裕で歌えますよ。大丈夫です」とエールを送られましたが、かえってプレッシャーをかけられたかも?

さて、スタジオにはグランドピアノがセッティング。弾くのは意外にも料理研究家の森崎友紀。真っ赤なドレス。ピアノは趣味だそうです。ジャングルで顔が真っ黒になった某テレビ局ディレクターの奥さんなのではないかと言われている方ですね。

仲宗根さんが、感情豊かでありながらもよく通るパワフルなボーカルなのに対し、藤あや子のボーカルははかなさを感じさせました。「今日も↑あなたに会いたい↑」の高音部もきちんと出し、貫禄を見せました。ただ、どんな曲も涼しげに歌ってみせるイメージのある藤あや子にしては珍しく、緊張感や必死さがにじみ出ている歌唱でした。

思うに、「おかしいでしょーー」とか「笑ってよーー」と、語尾を力強く伸ばす歌い方は、演歌にはないと思うんですね。この部分、かつての恋人への呼びかけであることを考えても、演歌だったら「おかしいでしょ…」と短めに減衰するように歌うのではないでしょうか。

歌い終えた藤あや子、「すみません、もう泣きそうです。泣きそう。この時間まで待って。すごく期待されて。すっごく出づらい(出づらかった?)です」

…「この時間まで待って」という言葉から察するに、出番も最後のほうですし、収録時間が長くて、緊張したまま相当待たされたことが推測されます。もしかしたら深夜に及んでいたのかも。(^^;

「今日は志らく師匠にお会いできるので(楽しみにして来ました)」

司会の東野が「では志らく師匠に感想を聞きましょうか」と振ると、志らくさんからコメントを直接もらえることに感激したのか、藤あや子は「あ゛ーーっ!? …お願いします!」と、ヘンな叫び声を上げてました(笑)。よっぽど志らくさんが好きなんですね。

志らく「本当にもう文句なしですね。それで、堂々と歌っているように見えて、どこかに、この歌に対する怯えみたいなものがあるんですよ。それが色気に変わってるような。だから聴いててたまらないです」
「…本望です」

この曲への緊張や不安を「怯え」という言葉で表現した、志らくさんの言葉のセンスに唸りました。

藤あや子全曲集2019/藤あや子「藤あや子 全曲集2019」藤あや子

 

12.細川たかし「愛情」

オリジナル:小柳ゆき
衣装:全身真っ赤な着物&白い帯
難所:サビのハイトーン、ラストの「true heart~~↑↑」

大トリは今回も細川たかし。細川といえば最近このCMで人気、ということでドコモの「イッキューパッ!」のCM映像が紹介されました。

CM効果で超多忙だそうです。なぜかVTRは北海道の浅里川(あさりがわ)温泉スキー場へ。小中学生のスキー大会が開催中。誰もいないゲレンデを、黒とグレーのスキーウェア(なぜかバスケットボールチームであるシカゴ・ブルスのデザイン)に、黒いゴーグルで、華麗にシュプールを描きながら滑り降りてくる細川たかし。
下で待ち受けている子どもたちの前には、「NPO法人 細川たかしとワールドスキージュニア」と書かれた黄色い横断幕が。そういう活動もやっているというさりげないアピールです。

番組スタッフのカメラが近づくと、わざとらしく尋ねます。「なんだ君たちは? あっ、演歌の乱? ふーん。暇なんだね君たちは。イッキューパッ!

さて今回の曲「愛情」。2000年の年間カラオケランキングで4位(第一興商調べ)となった、小柳ゆきの曲。女性の歌を持ってくるとは、意外です。前回のTUBE「さよならイエスタデイ」に続き、今回も、とにかく声を張りまくるボーカルが映える曲を持ってきました。グランドキャニオン(?)のような場所に立って歌っている、懐かしのPVが流れます。当時は小柳ゆきも、細川と同じ系列の事務所だったはずですが…。

「小柳ゆき? 小柳ルミ子じゃないんだ? わたしの城下町じゃないんだ?」「イッキューパ!ってなっちゃうでしょ」「高い声のやつか? なんとなく、コマーシャルで昔見たことがある」
「まあ大丈夫でしょ。雰囲気で雰囲気で。ね。ちょっと忙しいんでね。これから子どもたちの表彰式があるんで。皆さん、スタジオでお会いしましょう。はい。イッキューパッ!

…さすがにこれだけ脈絡なくイッキューパをちょくちょく入れてこられると、ちょっとイラッとしますね。(^^;

小柳ゆきは、「あなたのキスを数えましょう」「be alive」などのヒットで知られる、ソウルフルで伸びやかなボーカルが圧倒的な歌手。当時まだ10代だったはず。この「愛情」は、ラストの突き抜ける超ハイトーンが聞かせどころ。果たして細川は、女性の曲を歌い上げることはできるのか?

最近、NHKの「筋肉体操」に出演していて話題の武田真治が、サックス演奏で参加。黒いノースリーブ+白い袴の衣装で、鍛え上げられた肩や腕の筋肉が目立ちます。この曲にはイントロがなく、まずサビ部分をゆったり歌いながら始まります。ですので、これまでの出演歌手がステージ中央につくのを待ってから曲が始まっていたのに対し、細川たかしはステージ袖ですでに歌い始め、歩きながら登場しました。

テレビ越しにも伝わってくる、豊かで太い声量。最後の「true heart~~!」は、目を閉じ、額の血管が浮き出そうに、顔を赤くしながらの熱唱。やはりオイシイところを持っていきました!
初登場の前回があまりにも強烈だっただけに、インパクトはやや薄れた気もしますが、ゲストたちも大笑いしながら見ていました。

東野に「紅白対抗(でアナタは白組)なのに、なんで(着物が)赤なんですか!」とツッコまれていました。武田真治も「師匠が白いお着物を着るということで、(自分も合わせて)白い袴を履いてきたんですけど、まさかの赤…」と驚きを隠せない様子。直前になって衣装を変更したんでしょうか。自由ですね。(^^;

志らく「御大に対してこういうことを言うのは失礼ですけど、あなたはいったい何なんですか?!」 ※あくまで驚きと褒め言葉としてのニュアンスです

冬嵐/細川たかし「冬嵐」細川たかし

さて、もはやどちらが勝とうが負けようが構わないのですが、紅組vs白組の勝負の行方は? これまで歌われた曲の映像がダイジェストで流れ、スタジオの観客が手元のボタンを押して投票。結果は…

白組54 : 紅組46

で、白組の勝利。白組2連勝となりました。

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歌手の真剣さ・緊張感が伝わる演出

今回、スタジオセットが明らかにパワーアップしていました。後ろの中央には、でっかく「ENKA WARS」の文字が。「演歌の乱」をそう英訳するかぁ!と笑ってしまいました(笑)。それを挟んで両側に3段ほど階段があり、歌手は右側から登場し、階段を降りてステージ中央位置につき、スタンバイするという形。その“入場シーン”から映すことで、なんとなく格闘技の試合のような緊張感が演出されていました。

今回、オッ?と思ったのは、司会の東野幸治が「では歌っていただきましょう。○○の□□□□です!」と曲紹介して、イントロが始まる前に3秒ほどの無音の「間」を挟み、歌手たちの緊張した、真剣な表情をあえて映していたことです。実際の収録は「では本番参りまーす! 5秒前!4、3…」といった感じで別々に撮影してあり、編集でつなげているのかもしれません。でも、その「間」をあえて残し、歌の前に一瞬の静けさを作ることで、見ている側の緊張感や集中力を否応なしに上げ、聴くぞ!という姿勢になる気がしました。

 

あまりに強すぎる「バラエティ色」

歌番組ではありますが、バラエティ番組の要素が非常に強く出ているように感じました。歌の最中に「すごーい」「うまーい」と、ひな壇ゲストたちの声が挟まれていましたが、見ている我々の感想をそっちへ強制的に誘導しようとするようで、あまりいい気はしません。歓声や笑い声、拍手、歌っている最中にゲストが思わず漏らす感想すらも、実は後から編集し、タイミングのいいところにポンと足せるものだと思います。

そういった演出は「演歌歌手だけじゃ盛り上がらないだろう」という判断から来るのかもしれません。でも、ここまでバラエティ色を強くしなくても、賑やかしのためにひな壇芸人ゲストを置かなくても、「演歌歌手がポップスを歌う」というコンセプトだけで十分楽しめると思うのです。もちろん、きちんとツッコミのできる司会と、的確な感想を言えるゲストは必要ですが。

曲の最中、ひな壇で一人だけ立ち上がって、飛び跳ねて大げさに拍手したり、両腕をガッツポーズでぶんぶん上下する鈴木奈々。盛り上げてくれるのは非常にありがたいし、彼女は適役だと思うのですが、さすがにやり過ぎでは…?と思わずにはいられませんでした。(^^;

 

警戒される番組から、ぜひ出たい番組へ?

昼間に放送された第1回の「演歌の乱」の時は、まだ番組の反響が分からず、「ポップスの最新ヒット曲なんか難しくて歌えない」「イメージが崩れる」「何のメリットがあるのか」と演歌界もやや警戒していたのではないか…と推測します。
それが、前回の「演歌の乱」が(徳永くんだけ突出した形ではあるものの)話題になったおかげで注目され、番組側も出演オファーをしやすくなったでしょうし、貴重な民放ゴールデン帯に演歌をフィーチャーした番組として、逆に「ぜひ出たい!」という歌手が増えたのではないでしょうか。
今回の顔ぶれを見て、前回以上に、力の強い事務所だけで出演枠を独占してしまったような印象を持ちました。もっと中堅や若手に、実力をもてあました歌手がゴロゴロいるのになー。でも演歌の歌い方を大事にして、ポップスに寄せるのをよしとしない姿勢の人もいますし、それは人それぞれ。ここ数年のポップスのヒット曲を歌いこなせるのは、年齢で言えば40代がギリギリかもしれません。

回を重ねるにつれ、いわゆる「大御所」を出そうとする意図は理解できるのですけど、大御所ほど最近のポップスに親しんでおらず、かつ自分のスタイルが確立してしまっているので歌い方に柔軟性がなく、「うまいけれど、意外性はそんなにないかな?」と思ってしまうのも事実です。あくまで私の感想ですが、今回で言えば天童よしみや五木ひろしがそれにあたります。

 

歌っている最中にカメラを切り替えないで!

せっかく歌手のうまい歌に聞き惚れているのに、突然画面が変わって、ひな壇で口ずさんでいる芸人の顔を大写しにするのはやめてほしいです。見ている側は、歌っている人に心を開いて向き合い、顔の表情も含めて歌の世界に引き込まれています。なのに、カメラを切り替えていきなり別人の顔を見せられると、私は本能的に嫌悪感を覚えます。こちらの感情や集中力を無理やりブチッと切られるような感覚。

例えば東京ドームのような大会場でライブがあると、ステージ横に、後方席からも歌手の表情が分かるよう、大型ビジョンが設置されますよね? バラードを熱唱するアーティストの顔が大写しになって、ファンが目をハートにして感情移入している最中に、いきなり全然知らないおじさんの顔に切り替わったら、イヤじゃないですか? 残念ながらそういうことをやっているのです、この番組は。

イントロとか間奏、あるいは歌のフレーズが途切れる一瞬の間に、タレントや観客の表情を映すのはいいと思います。でも、歌手が声を発している時にカメラを切り替えるのはやめていただきたいです。これは切にお願いします…。演歌歌手が真剣勝負で臨み、極めて高いパフォーマンスを見せてくれているのですから。

 

「歌に感情を乗せる」という高等技術

今回あらためて、「歌声にきちんと感情を乗せるということが、いかにスゴイ技術なのか」ということを実感しました。

プロの演歌歌手のすごいところは、単に「音程が正確!」「こんな高い音まで出せる!」といったことだけではありません。我々シロウトは、ただ音程を正しく歌うだけでも、そこそこ「歌がうまい」と言われます。でもそれだけでは、のっぺりとした、何の味わいもない声にしかなりません。

そこへ、時に優しく、時に太く力強く、歌詞に沿ってさまざまな声色を使い分け、音量の大小までコントロールし、適所に節回しを入れてアレンジし、さらに顔の表情まで含めて感情を乗せるからこそ、言葉がより心に響いてくるものです。それは才能と、鍛錬の積み重ねがあって初めて可能となる、到底真似のできない芸術。彼らがほんのワンフレーズ発する歌でさえ、何十年分の時間が裏打ちされているのです。

そういった技術を投入することで、演歌歌手は、聴き慣れたヒット曲を、オリジナルとは違ったアプローチで表現してくれます。我々は、そこに感動するのです。演歌歌手は演歌を歌うものだ、という固定観念を取り払い、うまいものはうまいし感動するんだ…と評価してくれるこの番組は、とてもありがたい存在です。また次回もあることを、心から期待しています。

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