・五木ひろし、紅白歌合戦に出場せず 50周年コンサートでファンに報告
・五木ひろし 紅白「終了」 不出場表明、71年から50回連続出場でピリオド
・五木ひろし 紅白ならず 歴代最長の連続出場記録50年でストップ「連続50年の喜びを胸に終了したい」
・五木ひろし 紅白連続50回出場で区切りの背景
・五木ひろし、紅白出場終了宣言 50周年公演で「喜びを胸に終了したい」 歴代最長の連続出場記録は50年でストップ
・五木ひろし、50回連続出場の紅白に今年は不出場 「喜びを胸に終了したいと思います」
五木ひろしは10月16日・17日の2日間、大阪・新歌舞伎座で50周年記念コンサートを開催。その2日目のステージの終盤で、昨年50回目の出場をした紅白歌合戦について「喜びを胸に終了したいと思います」と宣言したとのこと。
昨年の紅白、五木さんは前半(第1部)のトリという順番で「山河」を歌いました。あのステージが五木ひろしにとって最後の紅白だったのか…と後から知らされるなんて、とても残念な思いです。
あくまで勝手な想像に過ぎませんが、それまで必ず番組終了間際のトリに近いところで歌ってきて、連続出場回数の記録を持つ大ベテラン歌手の五木さんとしては、前半のトリという順番で歌った(歌わされた)のは、それがNHKの最大限の敬意(あるいは譲歩)だったとしても、かなりプライドを傷つけられた出来事だったのではなかったかと思います。
客観的に考えても、かつて50回目の出場が決まった時、事前に「今年が最後」と宣言して、当日は大勢の歌手が盛り上げる中、ド派手に龍に乗って大トリを務め有終の美を飾った北島三郎御大に比べると、扱いが冷たいのは否めません。重みが違うと言われればそれまでですが、50回という数字は同じですし、ましてや連続出場がいちど途切れている北島さんと違って、五木さんは50年連続という前人未到の大記録なのに。
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ここで、昨年の紅白(2020年 第71回NHK紅白歌合戦)を私も録画してあるので、あらためて五木さんの出演した場面を振り返ってみましょう。
時刻にして午後8時49分頃、ステージ上の弧を描く階段の上で待機した五木ひろし。その状態で、白組司会・大泉洋が語ります。
「さて、前半戦の最後です。今回の出場で、北島さんの持つ紅白50回目の出場という大記録に並び、しかも史上初の連続50回という記録を打ち立てた、五木ひろしさんです。今日、こんなコメントも出されました。『皆様に支えられ、たどり着いた50回連続出場。私にとっても大きな区切りとして、万感の思いを込めて歌います』。区切りというとても重い言葉をおっしゃった五木さん。魂を込めた歌を届けてくださいます。五木ひろしさんで『山河』」
青い照明、ステージの床一面を覆うスモークという、シンプルな舞台で歌われる「山河」。サビの繰り返しを歌っている間は、五木さんの過去の紅白出場時の映像が数秒ずつ、10年分くらい流れました。
ちなみにこの年の紅白は、新型コロナウイルス感染症のことを考慮してか、あまり派手でカラフルな照明は使われず、番組全体を通じて、落ち着いた青い照明で歌われる場面がやたらと多かったのです。それは、医療従事者への感謝の表明の意味もあったかもしれません。
余談ですが、作詞・小椋佳、作曲・堀内孝雄による、五木ひろしの代表曲の一つである「山河」が紅白で前回歌われたのは2000年。それ以来20年ぶり2回目でした。2000年の時のことは私も記憶に残っていて、大トリつまり番組のいちばん最後に歌われ、たしか紅白両方の大勢の歌手がステージ左右から見守る中、壮大なアレンジと演出もあいまって、20世紀を締めくくる曲としてふさわしい歌唱でした。たしか後日談で、その時ステージにいた和田アキ子が感動してボロボロ泣きながら「五木さん、本当にいい曲だねぇ」と声を掛けた(正確な言葉は違うと思いますが)、というエピソードがあったように思います。私がたまにカラオケで「山河」を歌うのも、この時の感動が心の片隅に残っているからだったりします。
その時に比べると、コロナ禍のせいとはいえ史上初の無観客で、ステージには五木ひろしただ一人、壮大なオーケストラも合唱隊もいない中で歌われる名曲「山河」は、やや寂しい感じがしました。前述したように、事前に用意したコメントを、司会の大泉洋が読み上げた形で、つまり五木さんは歌以外はひとことも発さなかったのです。「万感の思い」という言葉も、50回達成の喜びというよりは、まるでこの場を最後に去っていくような印象を残しました。五木さんの表情に、どこか悲壮な決意のようなものを勝手に読み取って「もしかしたらこれが最後なのでは?」とうっすら思い、今回の紅白不出場のニュースに「あぁ、やっぱり…」と思ったのは、私だけではなかったでしょう。
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発表があってから、そこに名前がないと「落選」という書かれ方をされてしまうのは明らかです。NHKよりも先手を打って出場しない意向を表明したのは、五木さんのせめてもの矜持・意地だったのかもしれません。
若手にも機会を与え、演歌界を牽引しているという自負をお持ちでしょうし、実際そうだと私も思います。そんな五木さんが紅白に出られなくなるのは、実質的に演歌そのものの大幅なリストラと言われても仕方ありません。とはいえNHKはきっと、別にリストラなどしているつもりはまったくなく、「『うたコン』のように、演歌歌手が出る番組も地上派(総合テレビ)でちゃんと作っている」「皆が納得するようなヒット曲が演歌から出てくれると期待して、待っている」というスタンスなのだと思います。
でも音楽を聴く環境が変わり、ヒットをはかる基準・ものさしは大きく変わりました。私は最近よく「今の時代におけるヒットとは何か?」について考えます。
残念ながらCDという音の入れ物は、まだまだ多くの人に愛されているとはいえ、メディア(音楽を記録する媒体)としては既に時代遅れのシロモノとなってしまいました。たとえ週間CDランキング総合1位を取ったとしても、何の話題にもならない時代です。今人気のあるアーティストの多くは、CDを出すことなく、配信という形でのみ曲を発表し、YouTubeやサブスクリプションサービスにおける再生回数で人気の度合いを誇示するのです。そこは再生何千万回達成、何億回達成、という数字で語られるレベルであり、音楽市場の主戦場がそちらに移ってしまった以上、いまだCDに支えられている演歌の世界は、同じ土俵に上がることすら許されないのです。
そういう意味で、これから先、ポップスと比肩できるような規模のヒット曲が演歌から生まれることは、二度とないと断言します。少なくとも、今紅白に出ているような歌手からは。
そんな中で、いったいどう頑張ったら認めてくれるんですかね、NHKさん?
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