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Amika 12年ぶりのライブ開催 隣り合い微笑み合う私たちの世界(1)


※このページは演歌・歌謡とは無関係の、管理人の個人的ライブレポとして掲載しています。何卒ご了承ください。

 この日をどれだけ待ち望んだことだろうか。2017年9月30日、シンガー・ソングライターのAmikaが、東京・仙川の「キックバックカフェ」でライブを開催した。公式サイトの記録によれば、最後に単独ライブを開いたのは2005年。実に12年ぶりとなる。
 
 

第一部:ご無沙汰しております

 過ごしやすい秋晴れとなったこの日、京王線仙川駅から徒歩8分ほどの場所にあるキックバックカフェの入口には「SOLD OUT」の文字が掲げられた。17時からの受付開始を前に、16時頃には既に店の前に行列ができ始めていた。地元住民がそれを不思議そうな顔で眺めながら通り過ぎていく。

 通常のイベントより席数を増やしたという店内は満席。客席の期待感が頂点に達し迎えた開演時刻、18時30分。大きな拍手に迎えられ、客席と店のカウンターの間にある狭い通路を通って3人がステージへ。向かって右にキーボードのたつのすけ氏、左にギターの嘉多山信氏。そしてふんわりした紺色ワンピース姿のAmikaが中央のマイクスタンドの前に立った。拍手が鳴り止み、ピアノの音色と共に静かに歌いだしたのは…「世界」だった。

──あたしの世界とあなたの世界が 隣り合い微笑み合えるのなら

 

 代表曲と言える一曲。客席いっぱいの聴衆をまっすぐに見つめながら、一語一語丁寧に歌うAmika。その表情に緊張は見られず、こうやって再び皆の前で歌える喜びに満ちあふれているようだった。もちろんその気持ちは聴衆の側も同じだ。感激で、私の目は早くも涙でいっぱいになってしまった。

「…ご無沙汰しております。Amikaです」

 緊張と照れくささが入り混じったように挨拶するAmika。ライブは十数年ぶりだが、時間が経過している感覚があまりないので、何年ぶりというのがよく分からない、という。客席から「おかえり!」と声が飛び、「ありがとうございます!ただいま!」とうれしそうに応えるAmika。

 続いての曲は「ビール」。別れた男性と久しぶりに会い、なにげない会話の中で駆け引きをしている女性の心情を描いた歌。けれど今日は、ファンと久しぶりに会えたAmikaの喜びの気持ちを表しているように聞こえる。

 さらに、Amikaの作品群の重要な一角を占める「ナンを食べに行く」。歌われている隠れ家的なカレーの「あの店」は、もしかしたらこのキックバックカフェのような店なのかもしれない、と考えたりする。実は、この日のキックバックカフェのフードメニューにナンとカレーが用意されていることをひそかに期待していたのだが、なかったのが残念。


この日は3種類のフード&ドリンクセットメニューとケーキセットから選ぶ形だった

 飲食シリーズ(?)の2曲の後は、雰囲気が変わり、アップテンポで不安げな曲調の「ルービックキューブ」。ピアノとギターが激しくリズムを刻み、ステージ上に小さな嵐が吹き荒れる。

 あらためて挨拶。「今日はお越しいただいてありがとうございます」
 リハーサル時に、店の外に並んでいるお客さんたちが見えて、うれしさに思わず出ていって声を掛けたくなったけれども我慢して、もどかしかったそうだ。歌っている時は緊張しないが話すのは苦手で、MCに入った途端アワワワとなってしまう、言いたいことはいっぱいあるのにうまく話せない、とAmika。それは今に始まったことではなく、ライブでは昔からそうだった。だから戸惑いながら語る様子にすら、私は「あぁそうだ、Amikaはこういう人だった」と安心した。もし十数年の間に変貌し、別人のように流暢にしゃべりまくるAmikaになっていたら呆気にとられていただろう。うまく表現できずにいても、喜びで胸をいっぱいにしているのは表情から十分に伝わってくる。そんな彼女をファンが温かく見守る和やかな雰囲気。そこで、Amikaが笑顔のまま妙なことをポロッと口にする。

「今日は… なんだか生前葬みたいです」

 後から思えば、この日のライブにおいて最もインパクトのある言葉であった。意表を突いた表現に、多くの人の頭に「えっ?」と疑問符が浮かび、客席から思わず笑いが起きる。そこには、どう受け止めていいのか分からない困惑も多分に含まれていた。Amika流の自虐ぎみなユーモアだったのだろうが、決して縁起のよろしくない言葉である。私は真意をはかりかね、苦笑いしながら悪い予感が頭をよぎってしまう。

 たつのすけ氏が鍵盤からギターに持ち替え、「一枚のガム」。ほぼCDに収録されている通りの再現。口数の少ないあなたがくれた一枚のガムを題材に、何気ないのどかな日常の光景をおだやかに歌った曲だ。

 ここで、今日のライブが実は2部制で、休憩時間をとることを初めて発表。

「このお店にはトイレが一つしかないので、どうしても待てない方は隣の島忠(島忠ホームズ)のトイレを使ってください。実は私たちも、開演直前まで島忠のトイレにいて、そこから、しれっとまっすぐステージに来たんです(笑)」

という話に大ウケ。もちろん控え室は店の建物内にあるのだろうが、客と鉢合わせしないよう、開場後は外のトイレを使っていたらしい。

 第一部最後は、アップテンポの「90%」。かつて大手メーカー製デジカメのCMソングに使用され、現在でもDAMカラオケに唯一入っているAmikaの曲である。ダイナミックな力強いボーカルが響く。

──誰かの10%の中に溶けて 記憶の私は今でも笑う

 

 AmikaはCM音楽の仕事をずっとやっており、ライブをやっていなかっただけで、我々の前に現れなかっただけで、歌う機会は我々が想像する以上に多かったのだろうと思う。その意味では実はブランクはなく、ずっと現役のシンガーだったとも言える。当たり前だが、18年以上前に発売されたCDの声質は幼さ・細さを感じさせる面もある。むしろその声で振り絞るように全身全霊で歌うのがAmikaの魅力の一つであった。そして今、特長を保持したまま、声は太く、表現はより力強くなった気がする。
 ここで3人はステージを降り、いったん退場。
 
 
次ページ 第二部:『空白の10年』が育んだ気持ち
 
 
(1)第一部:ご無沙汰しております
(2)第二部:『空白の10年』が育んだ気持ち
(3)アンコール:ある告白と決意
(4)あとがき:歳月を経てなお、変わらぬ歌声を聴ける喜び

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