NHK「ごごウタ」が終了 4年の歴史に幕

ごごウタ

3月12日、NHK「ごごナマ ごごウタ」が、最終回を迎えました。全国向けの地上派(NHK総合)で歌手の歌を聴ける貴重な番組が、4年で幕を下ろすことに。

2016年に始まった当初は、NHKの敷地内にある「ふれあいホール」からの公開生放送でした。事前に観覧募集し、観覧客を入れていたのです。

ゲスト歌手はカバー曲や過去の代表曲を歌うことはなく、歌うのはすべて新曲。歌う前のトークで、写真とともに「最近ハマッているもの」を紹介したりと、素顔が垣間見える演出になっていました。ゲストは全員、最初から最後までずっとひな段に座り、司会・小堺一樹さんと他の歌手がトークしているのをにこやかに見守ったり、ツッコミを入れたり。ある程度台本があるとしても、生放送に脱線やハプニングは付き物。どんなトークが来ようが打ち返し、あるいは変化球を投げて笑いを取る小堺さんの司会は安心して見ていられました。
塚原愛アナウンサーは基本的にフリートークには参加せず、ゲストの出身地やデビュー年などの基本的なプロフィールの読み上げや、歌う前の曲紹介に徹していました。それでも時々、小堺さんや歌手にツッコまれて見せる表情が面白かったです。

生放送ゆえ、臨時ニュースが飛び込んできて番組が中断したことも。また国会中継のため、生放送の予定が直前に取りやめになり、収録しておいて後日あらためて放送、ということが何度もありました。しかもその放送時間帯は午前2時台とか3時台とか…。

番組スタート時こそゲストは演歌系の歌手で占められていましたが、徐々にアイドルグループやポップスの新人歌手、ミュージカル歌手が出演することが増加。番組枠も、かつては50分程度で8~10組の歌手が出演していたものが、30分で6組ほどに。それにより、演歌・歌謡曲の歌手にとってありがたい存在のはずのこの番組すら、狭き門となっていきました。「うたコン」はおろか「新・BS日本のうた」にも出るチャンスを得られない歌手は大勢いるというのに…。ただそれは「ミュージックステーション」に出られるアーティストが限られているのと同じで、歌番組が少ない今、どのジャンルの歌手もテレビに出る機会を得るために必死なのでしょう。

2020年2月、番組は転機を迎えます。1月末をもって会場だったふれあいホールが閉鎖されて使えなくなり、公開生放送は終わりを告げました。私も何度か観覧に応募したものの当選せず、一度も行けないままだったのは心残りです。

その後は、放送センター内のスタジオからの放送という形に。観客はいないのに、歌のイントロや間奏、歌い終わった時などに「拍手の音」がSEで流れるように。歌い終わったらシーンとしてしまうので、メリハリを付けるためにも必要なのは分かるのですが、どこか空しさも感じました。
さらに追い打ちをかけるように新型コロナウイルス感染症が拡大。飛沫感染を防ぐため、スタジオ内でもソーシャルディスタンスをとり、司会とゲストが大きく離れて座る形に。かつて歌手がぎっしり座っていたひな壇がガランとなったスタジオは、画面越しに見ても異様な光景でした。

トーク席へは一人ずつしか入らず、入れ替わりで次の人が入る形に。これによって、以前はあったゲスト同士の会話・交流がなくなってしまいました。バラエティー番組がやっているような「複数のゲストを座らせて、間にアクリル板を置く」という形をとることは最後までありませんでした。

ラジオ局などには、演歌・歌謡について知識が豊富で、歌手のことをよく覚えていてグイグイ踏み込んでいく、ベテランの名物パーソナリティーがいるものです。でも小堺さんは決してそういうタイプではありませんでしたし、それを目指しているわけでもなかったでしょう。そんな“一歩引いた”小堺さんだからこそ、鋭いツッコミや&軽妙なトークが可能だったのだと思います。

4年間番組を守り続けた、小堺一機さんや、NHKの制作統括の方には、感謝しかありません。一方で、いつからかレコード会社や事務所のプッシュする歌手を受け入れ、淡々と紹介していくしかないような空気(塚原アナの事務的なプロフィール読み上げがそれを象徴していました)を感じていたのは私だけでしょうか。
最終回で小堺さんが言っていたように、コロナ禍が終息した暁に、また賑やかに観覧やトークのできる歌番組ができることを祈って…。

はやウタ 予告
ごごウタ最終回

最終回では、新番組「はやウタ」が正式に告知されました。ゲストの顔ぶれからしても「ごごウタ」の流れを汲む内容になるようですが、さて、どんな番組になるのか…?

関連記事

最近の投稿

ページ上部へ戻る